『木犀軌道』は、金木犀の香りがふいに過去の記憶を連れてくる感覚と、「木犀/木星」という響きの重なりを軸にした、透明感のあるオルタナティブJ-ROCKです。
写真には写らないのに記憶には残る香りを、地上から遠い星へ伸びていく“軌道”として描いています。6/8の静かなピアノ、チェロ、クリーンギターから4/4のバンドサウンドへ広がり、終盤で再び余韻のある拍へ戻る構成です。
歌詞
花の名前も知らないまま
風だけ先に 秋を告げた
見えないものほど 遠くまで
曲がり角から 届いてくる
大きな声じゃなくていい
枝先に灯る 小さなオレンジ
隠れるように咲きながら
街の記憶を染めていく
「ここにいる」と言わないくせに
誰より先に気づかせる
名前を知るより 少し前
僕の季節は変わってた
香りは便り
宛名もない
言葉になるより
先に届く
far away
still in the air
振り向いた頃には
風の向こう
写真には写らないものを
僕らはなぜか覚えてる
色より先に 香りが来て
昨日の扉を開けてしまう
近づくほどに 小さく見えて
離れるほどに 強くなる
見つけた頃には散り始め
知らない頃から残ってる
香りは便り
返事はいらない
風向きひとつで
過去まで届く
知らないうちに
知ってしまった
散って初めて
そこにいたこと
木犀と木星
同じ響きで 遠く離れて
空まで行けない香りなのに
どうして心を越えていく
小さく咲けば 咲くほどに
遠くの誰かが振り返る
誇らなくていい
名乗らなくていい
秋はもう
君を知っている
木犀
木星
同じ音だけ
風に残った
still in the air
雨の歩道に落ちた花
金色だけが 足元に残る
散ることさえも
飾らないなら
それを謙虚と
呼ぶのだろうか
去り際までを
選べるのなら
それを気高いと
呼ぶのだろうか
ただ咲いて
ただ香って
何も残さない
ふりをした
なのに僕らは
次の秋にも
同じ角を曲がるたび
君を探してしまう
姿ではなく
色でもなく
風に残った
その気配を
木犀と木星
地上と空を ひとつの音で
結んだ理由は知らなくても
少しだけ似ている気がした
遠くにあるほど
近く感じるものがあるなら
届く距離だけを
距離と呼ばないで
見えなくなった
その先まで
香りの軌道は
続いていく
花はもうない
それでもまだ
曲がり角には
秋がいる



